こんにちは。歴史を学ぶ上でより哲学的なテーマである史学史。
歴史記述とは違う、史学史についてご紹介いたします。
【史学史とは】
史学史は、「歴史の歴史」と表現され、「時代によって歴史家がどのように歴史を記述したか」を研究する学問分野です。
今回は簡単に史学史における6つの区分をご紹介します。
①古代ギリシアの同時代史、神話記述
⇒見聞や伝説、伝承に頼った歴史で、資料よりも口伝や実体験に頼る
この時代の有名な歴史家)ヘロドトス、トゥキディデス
①′古代中国の文献考証
口伝や資料から歴史を記述することに加え、その資料や情報が真実であるかどうかを考えることを考証という。現代の歴史学の視点からすると、文献考証は必要不可欠である。他の地域と比べると、この時期から正史をつくろうとしていたメンタリティはやばい。
有名な歴史家)孔子 ⇒「春秋」を解釈する「春秋学」を創始
司馬遷⇒正確な『史記』は以降の歴史記述に影響を与える(通史、人物史)
②中世ヨーロッパのキリスト教の影響
アウグスティヌス:「二国史観」⇒「神の国」を記述する、教訓を導く
その地域の帰属感を刺激するような同時代史が広まる。
ルネサンス期の歴史記述)マキャベリ、グイッチャルディーニの同時代の地域史
③啓蒙主義から生まれた事実尊重・方法論の確立
フランスのベール『歴史批評辞典』⇒歴史を疑うこと
モンテスキュー⇒事実から理論的モデルを導き出そうとする
有名な歴史記述)ヒューム『イングランド史』、ギボン『ローマ帝国衰退史』
④古文書学の成立:資料の批判的研究 ⇐歴史を疑うことが体系化
17世紀のJ.マビヨン(ベネディクト派)『古文書論』
⑤近代歴史学
19c.ドイツのランケによる歴史学の成立
・歴史事実の個別的把握「過去の事象を過去の文脈で理解する」
・方法論としての史料批判(実証主義歴史学)
(発展)ダールマンとドロイゼン「歴史の規則性はあるか?」
ヘーゲルのランケ批判→マルクスの唯物史観(テーマ史の発展)
アナール学派の民衆のメンタリティーに注目した心性史
→史学史の一番面白い時代である。
歴史記述に必要なもの、歴史記述の種類が体系づけられた時期なので、要チェック!
⑥現代歴史学における史学史観
クローチェ「すべての歴史は現代史である」
山下範久 「書き手の数だけ歴史がある」
ピレンヌ 「マホメットなくして、シャルルマーニュなし」
E.H.カー 「歴史は現在と過去との対話である」
→有名な事件や人物の歴史を正確に伝える歴史家の義務が再確認されたのは勿論、現代の価値観が必ず投影されてしまうとする考え方が主流となる。
現代の歴史学
現在の人が重要視している事柄が歴史として記述される、つまり現在の歴史家の思う重要度によって歴史は選ばれる。歴史の主観性が明示されたのは前述の通りである。
また史料では完全には読み取れないが、日本の大河ドラマでは描写される「そのときの心情はどうであったのか?」というメンタリティーについて記述することが重視されている。
なぜ源頼朝は義経を許さなかったのか、明智光秀は織田信長に反旗を翻したのか、心性を読み取ることも歴史の面白さである。
「歴史がなぜその方向に進んだのか」、「なぜ私達はその歴史をとりあげたのか」
乱雑に史学史を紹介しましたが、伝えたいのはこの2点です。
この2つの視点から歴史を楽しんでください。